東京医科大学(東京都新宿区)の内部調査委員会は、医学部医学科をめぐる不正入試疑惑に関連した報告書を公表した。
〈今年と昨年実施した一般入試1次試験で加点により不正入試が行われたのは20人近くに上り、不正は前理事長の臼井正彦被告(77)=贈賄罪で在宅起訴=が指示したと認定。大学に寄付金を納入してもらうほか、個人的に謝礼を受け取ることもあったと明記した。2次試験でも女子受験者だけでなく、3浪以上の男子に対して合格を抑制するための得点操作が行われていたと指摘した。
報告書によると、今年の入試の1次試験で、(文部科学省の)前科学技術・学術政策局長、佐野太被告(59)=受託収賄罪で起訴=の息子を含む6人に最大49点を加点。2次試験の小論文では受験者全員に「0・8」を掛ける得点操作をしていたと認定した。男子の場合、減点後に現役と1~2浪の受験生に一律20点、3浪生には10点をそれぞれ加点。女子と4浪以上の男子には点を加えず、結果として女子と3浪以上の男子の得点が抑えられていた〉(7日の産経ニュース)。
東京医大の不正については、大学側に便宜を図る見返りに、佐野前局長の息子を合格させるという贈収賄事件があったから露見したのであるが、このような不正が行われたのは、得点に複雑な操作を加える独自の入試方式があったからだ。東京医大は、なぜ入試の成績以外の要素を加味して選考を行ったのか。
〈女子受験者の合格者数抑制について、大学関係者は「女性は結婚や出産を機に職場を離れる人が多く、女子合格者を抑え、系列病院の医師不足を避ける目的があった」と話している。3浪以上の多浪生をしぼった理由について「浪人を重ねている人は医師国家試験の結果も良くないという相関関係が出ている」としている〉(前掲の産経ニュース)ということであるが、説得力がない。
多浪生について医師国家試験の結果も良くないという相関関係が出ているならば、入試の際に多浪生に対しては不利な扱いをするということを明示すべきだ。もっとも受験勉強には適性がある。相関関係で示されるのは一般的傾向で、3浪以上だが根気があり、患者とのコミュニケーション能力が高い人もいる。こういう人は丁寧に面接を行えば見抜くことができる。