死刑制度に毅然と向き合った鳩山氏でさえ生前、周囲に「私でもオウム死刑囚の執行は躊躇する」と漏らしていた。自身や家族に対するオウム関係者らによる「報復」などを恐れていたからだろうか。
だが、上川氏は決断した。6日の7人の死刑執行後、上川氏は記者会見でこう話している。
「死刑は大変重い刑罰であり、その意味で一点の曇りもなく、まっすぐに澄み切った気持ちでことにあたった。慎重にも慎重な検討を加えた上で対応したということに尽きる」
「明鏡止水ということわざがあり、澄み切った心でことにあたるという意味がある。私も鏡を磨きながら、そこに映し出されるさまざまな事柄について澄み切った心でしっかりと向き合っていきたい。必ずしも一つの言葉で表されるものではないが、私はそうした姿勢を大切に考えている」
言葉はそれほどドラマチックではないが、冷静かつ慎重に精査し、覚悟を決めて署名した様子が伝わる。
上川氏を大学時代から知る人物は「飾らない人柄。意志の強い人」と上川氏を表現する。まさに法相として胆力が問われる死刑執行命令の局面で、上川氏の本領が発揮されたといえる。