福山・今津宿本陣、薩摩藩と深い関係 河本家文書で判明

 江戸時代の福山藩今津宿(福山市今津町)で本陣を営んでいた河本家に伝わる古文書の一部を市民らの歴史研究グループが判読し、「今津宿本陣 河本家文書解読集」にまとめた。河本家が薩摩藩に3千両の借金を申し込んだ文書の写しなどもあり、単なる「参勤交代時の定宿」にとどまらない関係性の深さがうかがわれるとしている。

 解読集は、「備陽史探訪の会」の河本家文書研究会(河本正二代表)が作成した。A4判68ページ。薩摩藩への借金申し込みをはじめ、薩摩藩主島津家との親しさが読み取れる藩士からの手紙や福山藩が領民に向けた触書、大名家ゆかりの宿泊者に出した献立など11の古文書が、解説とともに紹介されている。

 借金の申し込みは天保14(1843)年、「薩州様(薩摩藩主島津家)」に宛て、天保11年ごろの火災で焼失した今津本陣の再建費用として要請。しかし、再建された本陣の規模が焼失前より縮小していることなどから、3千両の借金はできなかったとみられる。

 ただ研究会は、最終的に断られたとしても、本陣を営む庄屋が有数の格式を誇る大大名に借金を申し込めること自体、関係の深さを示していると指摘。織田信長が天下統一を進めていた天正3年、上京した島津家久が河本家に立ち寄った記録もあり、交流は戦国時代にさかのぼるとみている。

 解読集は希望者に1部千円(送料別)で販売。問い合わせは河本代表(電)080・5232・9825。

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