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数人で全体統制
審査を受ける側も、審査員らにあからさまな接待を繰り返していたとされる。
関係者によると、料亭やホテルで宴席を設けたり手土産を持参したりするのは「常識」になっていた。全国各地にある審査員らの道場に出稽古に向かって面識を得たり、地元に有力者がいる場合は車での送迎を買って出たりするケースなどもあったという。
不正合格が横行した背景について、全剣連は昨年の実態調査で「居合道の審査は主観的要素が占める割合が多く、審査員の知遇を得ることが有利と考えられていた」としている。
居合道委員に就けば、遅くとも数年後には審査員も兼ねるようになる仕組みで、受審予定者は接待をすべき相手を容易に選別できたといい、調査では「指導的立場にある数人が居合道全体に有形無形の統制を及ぼす状況をもたらした」と結論づけた。
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「雲の上の存在」
全剣連などによると、今年6月現在で八段は全国で約200人、範士まで持つのは約50人。審査は八段が年2回、範士は年1回に限られ、毎年の合格者は数人程度の狭き門だ。
関東地方に住む七段で教士の男性は、八段や範士の有資格者を「多くの会員から尊敬を集める雲の上の存在」と評する。その上で「そんな人たちが、実力ではない形で今の地位に上がったり、その地位を利用したりして金を得ていたとすれば残念だ。命をかけて邁進(まいしん)してきた道が、汚されてしまった」と嘆いた。