西日本豪雨・想定外クライシス

(4)「町が沈む、言ってくれれば」ダム放流情報、周知に課題

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 貯水位がピークに達していた野村ダムでは7日午前6時20分、流入量と同量を放流する緊急放流「異常洪水時防災操作」が行われた。これにより下流の肱(ひじ)川が氾濫、流域の野村町地区など西予市の700棟近い住宅が全半壊もしくは浸水し、ユリ子さんを含む5人が死亡した。

 ダム側は放流の約4時間前、同2時半には市へ緊急放流する可能性があることを伝えていた。

 市が、ダム近くにある野村町地区の住民約5100人に避難指示を出したのは約3時間後の同5時10分。担当者は「強い雨が断続的に降っており、住民の安全性を考え、明け方に避難指示を出した」と説明する。

 そこから放流まで「猶予」は1時間あまり。市は20~30分おきに計3回、屋外スピーカーや防災無線を通じ避難を呼びかけた。国土交通省四国地方整備局もサイレンやスピーカー、警報車で放流を通知した。

 だが放流量は具体的に伝えられなかった。雨音で放送が聞こえなかったケースもあった。各家庭を回り避難を呼びかけた30代の男性消防団員は、「3割くらいは逃げなかった印象。あの浸水で死者が5人だったのは、正直少なかったと思っている」と打ち明ける。

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 異常洪水時防災操作は、野村ダム下流にある鹿野川ダム(同県大洲市)でも行われ、川の氾濫などにより4人が死亡した。

 こちらでは、地域によっては情報自体が伝っていなかった可能性がある。放流は市が出した避難指示のわずか5分後。自宅の2階に逃げて無事だった自営業の男性(64)は「普段は放流を知らせる車が来るのに、今回は何も聞こえなかった」と憤る。

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