米国上院の有力議員の補佐官が司法当局から中国政府のスパイと断じられていたことが判明した。この人物は日本の慰安婦問題でも長年、日本を糾弾し、いまもそのための在米組織の中枢にあることも分かった。
上院民主党カリフォルニア州選出のダイアン・ファインスタイン議員は8月5日、「連邦捜査局(FBI)から5年前に私の補佐官の一人が中国諜報機関にひそかに情報を提供し、対米秘密工作に協力していると通告を受け、独自にも調査した結果、すぐに解雇した。機密漏れの実害はなかった」という声明を発表した。
5年前の出来事がいま表面に出た理由は7月下旬の米国の政治ネット新聞による「上院で情報委員会委員長として機密を扱ったファインスタイン議員に20年も仕えた補佐官が実は中国の対外諜報機関の国家安全部に協力する工作員になっていた」という報道だった。
いまの米国ではロシアの大統領選干渉疑惑に加えて中国の対米工作の激化が問題となり、上院で25年も議席を保つ最長老の有力女性政治家、ファインスタイン氏の中国スパイとのつながりは全米に強い衝撃を与えた。トランプ大統領も8月4日の遊説で同議員の名を挙げ、「自分が中国のスパイに浸透されながらトランプ政権のロシア疑惑を糾弾するのは偽善だ」と語った。
さらに8月6日、ワシントンを拠点とするネット政治雑誌が「中国スパイとされるのは同議員補佐官だった中国系米国人のラッセル・ロウという人物だ」と断定する報道を流した。ロウ氏は長年、ファインスタイン議員のカリフォルニア事務所の所長を務めたという。
同報道をファインスタイン事務所もFBIも否定せず、一般のメディアも「ロウ氏こそ中国諜報部の協力者あるいはスパイだ」と一斉に報じるようになった。ただしロウ氏は逮捕や起訴はされておらず、その理由は「中国への協力が政治情報提供だけだと訴追が難しい」からだと説明されている。