電子たばこで吸引できるように加工した覚醒剤リキッドの摘発が国内で初めて確認された。リキッド型は周囲に気づかれにくく、これまでに「大麻リキッド」の存在も確認されている。他の覚醒剤の使用法と比べ、「手軽さ」も指摘されており、違法リキッド蔓延の兆しに警察当局などは警戒を強めている。
関東信越厚生局麻薬取締部が1月、大麻取締法違反容疑で逮捕したヒップホップミュージシャンの男(44)の自宅から小分けにされた大麻リキッド(計14グラム)を押収。電子たばこで使用していたとされ、2月にはリキッド所持に関して同法違反罪で全国初の起訴となり、東京地裁で有罪判決を受けた。
「違法薬物の成分を混入したリキッドは乱用者の間で浸透しつつある」。違法薬物の売買に詳しい暴力団関係者はこう明かす。この関係者によると、覚醒剤や大麻以外にも危険ドラッグを加工したリキッドも存在しているという。
こうした違法リキッドは、通常のリキッドと外観が同じで、電子たばこで摂取しても匂いなどから周囲に発覚するリスクが低いとされる。
嫌煙ムードの高まりとともに最近、紙巻きたばこの代用品として電子たばこの利用者が急増。それとともに違法リキッドも一部で広がりつつあり、インターネットなどを介して売買されているという。
使用方法の簡素さも、違法リキッド拡大が懸念される理由だ。覚醒剤は注射や「あぶり」と呼ばれる気化させた成分を吸引する手法で摂取するのが一般的とされるが、捜査関係者は「覚醒剤リキッドは電子たばこに装着して吸うだけ。手軽な分、乱用を助長する危険性もはらむ」と指摘する。(安里洋輔)