近代建築って素晴らしい(4)

設計の根拠を確かめろ 松隈洋・京都工芸繊維大教授

近代建築の保存活動に取り組むきっかけとなった神奈川県立音楽堂をめぐっては、職場で冷ややかな目を向けられた=京都市左京区(寺口純平撮影)
近代建築の保存活動に取り組むきっかけとなった神奈川県立音楽堂をめぐっては、職場で冷ややかな目を向けられた=京都市左京区(寺口純平撮影)

 --前川國男氏という建築家は「闘将」とも呼ばれました。事務所での仕事も厳しかったのでは

 松隈 所員の能力をぞうきんの水のようにしぼり取る。というのは、とにかく考えさせるんです。入所した当時、30人くらいの所員がいまして、いくつかのグループに分かれて仕事をするのですが、前川さんは所長室から出てきて、いろんなところを見て回るんです。

 --仕事ぶりのチェックと、アドバイスに回っていたのでしょうか

 松隈 僕が図面を描いていると、「ちょっと君、どきなさい」といって、スケッチを始めようとするんです。新人の僕なんて仕事がモタモタしているわけで、サーッと線を描いて、鮮やかな解答を示してくれるのを期待するじゃないですか。でも、そうではないんです。「うーん」とうなって、何も決まらずにその場を離れてしまうこともありました。

 --あまり明確な指示は出さない

 松隈 前川さん自身も、一緒に「答え」を探していたのだと思います。みんなで一生懸命考えて、ときには「ちょっとこういう風なのはどうかな」といってアドバイスして、軌道修正をする。

 --それはそれで大変そう

 所員は考えざるを得ないわけですよ。ドアの開き方一つでもどうしてそうしたのか、理由を聞かれます。つまり、感覚ではなく、きちんと考えて設計しないといけない。「自分で決めたものにどういう根拠があるのか、きちんと確かめろ」と指示する。

会員限定記事会員サービス詳細