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昭和51(1976)年に発売された日清食品の看板食品、即席うどん「どん兵衛きつねうどん」には、毎年数件、「味がおかしい」という苦情が寄せられる。苦情の主の多くは、関東に単身赴任する関西のサラリーマン。「いつもと味が違う」というのだ。それもそのはず、関西と関東のどん兵衛はパッケージが同じでも中身が少し違う。関西版は昆布だし主体の薄味、関東版はかつおだしを効かせた味付けとなっており、それぞれだしが違うのだ。
40年続く看板商品 「W」と「E」の印字を見つけろ
全く同じ商品のようだが、実はパッケージをよく見ると、ふたの「NISSIN」のロゴ脇に関西版は「W」、関東版には「E」という小さい印字を見つけることができる。それぞれ成分表示も異なっており、スープの内訳を見ると、関西版は昆布エキスが関東版より前に書かれており、より多く含まれていることが分かる。
日清食品ホールディングス広報部次長の大口真永さんは、「本格的な『うどん』を作る上で、東西の味の違いは避けられなかった。関西人はだしに関しては譲れないところがある。業界で例のない工夫だったが、こだわった」と振り返る。かつおだしのどん兵衛だけで発売すれば、関西人の支持は集められないとふんだのだ。
ただ、問題になったのは、東西の販売エリアはどう区分するのかということ。当時、味の境界線は「静岡あたり」といわれていたが、担当者たちは自分たちの舌で、境界線を探すことにした。
新幹線に乗り、駅周辺でうどん、そばを食べ続ける実地調査を行うこと約1年。開発チームは味の分かれ目は、滋賀と岐阜の間付近という結論に行きついた。
まさに、天下分け目の戦いが行われた関ケ原付近。味の分かれ目も関ケ原近くにあったのだ。