【ベルリン=宮下日出男】バルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナが欧州諸国に向かう難民・移民の新たなルートとなり、その流入が深刻な問題となっている。欧州連合(EU)の対策が遅れる一方、周辺のEU加盟国が独自に国境管理を厳格化したことで、非加盟のボスニアがしわ寄せを受けた形だ。
「移民に人間らしさを。市民に安全を」。ロイター通信などによると、ボスニアの首都サラエボの政府施設周辺で26日、約50人がこう記載された横断幕などを掲げ、政府への抗議集会を開いた。参加者は同国北西部の自治体の首長らだ。
参加したビハチのファズリッチ市長は「われわれではこれ以上、問題に対処できない」と語り、政府に一段の移民対応への支援をするよう訴えた。
国際移住機関(IOM)によれば、7月25日時点でボスニアに今年流入した移民らはパキスタン、シリア、アフガニスタンなどからの9056人で、昨年1年間の流入数の約8倍に増えた。大半の移民らは豊かなEU加盟国を目指すため、隣接する加盟国クロアチアとの国境に近い北西部のビハチやベリカ・クラドゥシャに集まっている。
2015年にバルカン半島経由の移民流入が深刻化した欧州ではEUがトルコと合意した対策によって規模は縮小したが、その動きは続く。ギリシャに入った移民らを加盟国が分担で引き受けるEUの計画は機能せず、ギリシャも動きを管理しきれていない。