話の肖像画

原子力規制委員会前委員長・田中俊一(4) 圧力はね返した「透明性」

それに、東京電力福島第1原発のような冷却材喪失事故が起こると、高速炉は核暴走する可能性がある。そんなものを民間がやりますか。民間が使わない技術を、なぜあれほどカネをかけてやったのかと怒りも覚えます。文部科学省が自分の責任になるのがいやだからずるずるやってきたけれど、結果的にありがたいと思っているはずですよ。

〈任期終盤には、東電柏崎刈羽原発6、7号機の審査を集中的に行った〉

私の時代には間に合わなかったが、審査終了は時間の問題でした。審査をずっと塩漬けにしておく合理的理由はないし、規制委の判断を受けて、再稼働するかどうかは東電と住民と政治の問題だというのが、規制委の基本的な考え方です。

〈審査では、福島第1原発のトリチウム水の処理のため住民と向き合うことを、東電の事業者としての適格性の一環として強く求めた〉

貯蔵タンクを増設するスペースはほとんどないから、排出濃度基準以下のトリチウム水は海に捨てるしかない。事故前は捨てていたのだから問題ないという、常識的な理解をされている首長は多い。漁業者も、捨てるとマスコミが騒いで風評被害が広がるという心配はあるが、後継者不足の問題がマイナスイメージによって悪化することを恐れている側面もある。そうなるとトリチウム水とは別の問題です。

本音を地元の人から引き出し、本当の話ができるようにしなければいけない。(昨年6月に東電の社長に就任した)小早川智明さんは、引き受けたからには住民の本音に向き合う覚悟をしてほしい。ただ、東電が何か具体的に事態の解決に向けて取り組んでいるかを地元で感じるかといえば、ほとんど感じません。 (聞き手 鵜野光博)

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