JR九州は20日、昨年7月の九州北部豪雨で被災し、一部不通が続く日田彦山線について、来年4月をめどに復旧工事に着手すると発表した。沿線自治体にとっては朗報だが、JR九州は同時に不通区間の収支が、年2億6千万円もの赤字であることを明らかにした。赤字削減が復旧後の大きな課題となる。 (高瀬真由子)
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同日、福岡市東区で開かれたJR九州と沿線自治体の協議会で公表した。
会議は非公開で行われた。終了後に記者会見したJR九州、福岡、大分両県によると、来年4月までに復旧方法や費用負担について議論し、早期着工することで合意した。同時に、復旧後の路線維持に向けた取り組みも検討する。
JR九州は当初、復旧費が70億円に上ると試算し、「自社単独での復旧は困難」としてきた。
協議会では、復旧費について議論してきた。被災した竹本橋梁(大分県日田市、45メートル)を、架け替えではなく修繕で対応することなどで、鉄道の復旧費用を56億円に圧縮した。福岡、大分両県の災害復旧事業との調整で、JR九州の負担を縮減する。
復旧では、改正鉄道軌道整備法の活用も視野に入れる。適用されれば、国と自治体が復旧費の最大4分の1ずつを補助する。上下分離など事業構造の変更を条件に、国と自治体の補助は最大3分の1となる。
終了後に記者会見したJR九州の海老原毅経営企画部担当部長は「沿線の復興スケジュールに歩調を合わせ、検討期間を(4月の議論開始から)1年と区切り、課題に取り組む」と語った。復旧の完了時期は、被害が甚大なため、現時点では未定という。
一方、JR九州は日田彦山線のうち不通が続く添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)の平成28年度の収支を公表した。一部ではあるが、同社が路線別の収支を公表するのは初めて。
運賃など年間収入2800万円に対し、運行経費や車両メンテナンスは計約2億9千万円だった。1日1キロ当たりの平均通過人員を示す「輸送密度」は131人だった。
JR九州は、復旧後の鉄道維持に関する自治体の関与を求めている。協議会に参加する沿線自治体からは、乗客増加策として、周辺景観の整備や駅へのアクセス向上などが示された。