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化石燃料を一切使わず、太陽光や風力、海水から生成した水素などの再生可能エネルギーを使って航行する双胴船「エナジー・オブザーヴァー」。2017年6月にフランスの港町を出発し、そこから6年がかりで50カ国を巡る船旅が順調に進んでいる。その安全かつエコな航海を支える技術に迫った。
フランス北部にある港町のサン・マロ出身で経験豊富なヨットレーサー、ヴィクトリアン・エルサールは大西洋を渡るレースに参加していたとき、中間地点を過ぎたところですべての動力を失ったことがある。
それは、2013年のレース「トランサット・ジャック・ヴァーブル」でのことだった。帆に風を受けて船は進み続けたが、エンジンと発電機を使って電子機器を稼働させていたため、オートパイロット(自動操縦装置)とナヴィゲーションシステムが一時的に使えなくなった。こうしてエルサールは、このレースで優勝するチャンスを逃してしまったのだ。
「二度と同じ過ちは起こさない」と決めたエルサールは、「別のエネルギー源を複数利用する船をつくろうと思いつきました」と話す。この計画は、航海中に見かけた汚染をまき散らす貨物船によって確固たるものとなった。
「こうした船には重油が使われているため、人類に対する脅威となります」