米国の民事訴訟では、原告と被告が互いにあらゆる証拠の開示を求められる「ディスカバリー制度」が採用される。ギブンズ氏は「ディスカバリー制度で開示された膨大な証拠資料を効率的に精査するには、AIが有効だ」と指摘。「最近は、AIを活用して過去の判決のデータから裁判の勝率を予測する取り組みを行った例も聞く」と話す。
裁判官はAIの天職?
AIの活用は弁護士業務にとどまらず、裁判の審理課程での導入も進む。
中国紙チャイナ・デイリー(電子版)などによると、中国のIT企業が原告や被告、目撃者らの証言をリアルタイムに記録できるAIを開発。すでに中国内の数百の法廷で試験導入されている。大阪弁護士会の冨宅(ふけ)恵弁護士は「日本に限らず、法廷でのやり取りなどが記録される調書は書記官の聞き間違いなどによる誤りも少なくない。AIを使えば、書記官の負担が減ることが期待される」と指摘する。
活用の可能性が広がりを見せる中、「裁判官もAIに任せられるのでは」と主張する意見もある。
「AI裁判官」は過去の判例データを学習させることで実現するといわれる。AIの技術応用などを研究する近畿大の半田久志准教授は「膨大な過去の判例のデータを吸収し、人間より客観的な判断ができる点からAIにとって裁判官は適職だ」と分析する。