しかし、近年は20代の強豪が台頭し羽生一強から勢力図が変わってきた。平成28年、当時四冠の羽生前棋聖は、名人を佐藤天彦(あまひこ)名人(30)に奪取された。翌年、王位を菅井竜也王位(26)に、王座を中村太地(たいち)王座(30)に、そして今回、棋聖を豊島新棋聖に奪われた。
△AIでレベル上げ▲
羽生前棋聖は40代後半。一般的に体力が衰えてもおかしくない。昨年12月、「永世七冠」を達成した際に「今回が最後のチャンスと思っていた」とし、「最近は将棋の内容が大きく変わってきていて、ついていくことが難しくなっている」と吐露していた。
若手の台頭に寄与しているものの一つが、人工知能(AI)を搭載した将棋ソフトの登場だ。トップ棋士を破るほどの能力を備えた将棋ソフトは、局面を入力すると次の有力手が示され、多くの棋士らの参考になっている。
昔の将棋の研究は、紙に書かれた棋譜を元に、駒を並べるのが一般的だった。コンピューターを使い始めたのが羽生前棋聖ら「羽生世代」。当時はデータベースとして利用した。
次にインターネットが普及してネット対局ができるようになり、その後、将棋ソフトが登場。多くの若手棋士らが活用するようになった。実際に将棋ソフトで研究しているという村山慈明(やすあき)七段(34)は「研究熱心な若手は得る情報量も多い。ベテランは経験ではね返したが、若手は研究でカバーしている」と話す。