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【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮国営メディアは17日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が視察した北東部、咸鏡北道(ハムギョンプクト)の発電所建設現場や工場などで相次ぎ激怒する様子を伝えた。9月の建国70周年に向け、経済再建に集中するよう号令を下す中、思うように動かない幹部らにいらだちを爆発させた形だ。
「意を決して直接来てみたが、言葉が出ない」
朝鮮中央通信によると、金正恩氏は、漁郎川(オランチョン)発電所の建設現場で、堤防が着工から17年たっても完成せず、内閣の幹部らがここ数年一度も現場を訪れていないことを知らされ、「心から激怒」したという。発電所はもともと祖父の金日成(キム・イルソン)主席が1981年に建設を指示した。
「内閣に任せていては代が替わっても結末を見るのは困難だ」とも叱責し、党の指導部門の姿勢も問題視した。金正恩氏は4月に国の総力を挙げて経済建設に取り組む路線を打ち出し、経済政策は内閣の指揮に無条件で従うよう指示したが、現場で機能を果たしていない実態が露呈した。
清津(チョンジン)のかばん工場でも「陳列室がみすぼらしく放置されている」と「深刻に」批判。温泉保養施設では「湿って不快な臭いがする」と指摘し、浴槽は「魚の水槽にも劣る」となじった。ホテル建設現場でも工事の遅れを非難した。
今月初めにも北西部、新義州(シニジュ)の工場視察で責任者を叱責する姿が報じられた。一連の報道には、制裁が続き、目に見えた経済的成果が上がらない中、幹部らに責任を転嫁し、最高指導者に不満の矛先が向かうのをかわす狙いもうかがえる。