場所によって1000ミリを超えた歴史的豪雨の被害の全容はなお明らかではない。被災地では、安否不明者の救出、捜索活動が懸命に続けられている。無事であってほしいと祈るばかりだ。教訓として、災害が予想される場合には、まず避難を-と呼びかけたい。
▶災害心理学が専門の広瀬弘忠さんの「人はなぜ逃げおくれるのか」(集英社新書)が教えてくれる。避難とは危険から物理的に遠ざかることである。ところが「私たちの心は、予期せぬ異常や危険に対して、鈍感にできている」。まだ、あるいは自分だけは大丈夫と思い込んで、危険を回避するタイミングを逃してしまう。
▶これを「正常性バイアス」という。今回の豪雨で、避難指示や勧告に住民がどう対応したのか、検証しておきたい。広瀬さんは「20世紀は戦争の世紀だったが、21世紀は災害の世紀かもしれない」とする。惨事を繰り返さないために、「けっして忘災しないという覚悟が必要だ」。