〈今年3月、自身の出身校での経験を基にした小説「朝鮮大学校物語」を発表した。これまで一般に知られてこなかった同校の学生生活を詳しく描写し、関心を集めている〉
自分でも、なかなか特殊な学校に通っていたと思いますけどね。日本に暮らす1980年代の大学生が「倭風洋風(ウェプンヤンプン)(日本や西洋の文化)を追放しろ」と教育されたり、抜き打ちの荷物検査で寮の部屋を荒らされたり。本にも書きましたが、実際の話です。こんな大学が東京にあるのか、と読者を驚かせたい気持ちもありました。
ただ、登場人物たちは日本の大学生と同じように、恋をしたり悩んだりしながら生活している。読者の方も何らかの組織に属して、上下関係や恋、進路で悩み、必ずしも言いたいことが自由に言えるわけではないでしょう。時代や場所を問わない共通項を見つけてもらえればと思います。
本への反応は…さまざまですね。長文の感想を寄せてくれる朝鮮大学校OBもいれば、事実と違う、と怒り出す人もいる。朝大の学生は皆こうだ、と言っているわけではなくて、あくまで私の話をしているだけなんですが。北野武監督のヤクザ映画を見て、「俺の組と違う」と怒り出す組員はいないでしょ(笑)。やっぱり、在日はまだ作品の題材として扱われることに慣れてないんです。もっといろんな創作に登場して、善人に描かれたり悪人にされたりすれば、突き放して客観視できるんでしょうけど。