インドでは、下水が詰まった際、排水管内部に入って手作業で清掃する人たちが3万人ほどいて、全員が低カーストの人たちだという。衛生状況は最悪で昨年は有毒ガスや感染症などにより、約850人が死亡したとされる。ウィルソンさんは「不浄なことは『すべて下位カーストに任せる』という思考が国民に染み込んでいる。トイレ改革を通じて、インド人の意識が変わることを願う」と話している。
「トイレ改革」国際的なテーマに 中国では習氏が改善の大号令
トイレ改革はインドに限った話ではなく、世界各国で改善に向けた取り組みが進められている。国民の支持を得やすい身近なテーマであると同時に、対外イメージの向上にもつながるためだ。
中国では、指導部の大号令のもとで「厠所(トイレ)革命」が進む。習近平国家主席の肝いりの政策の一つで、公衆トイレの新設や改修を進めるほか、農村部のトイレを改善することで、衛生環境の底上げを図る。習氏は昨年11月、目標を上回る6万8000カ所のトイレが整備された状況を称賛。さらなる設置を指示した。
中国の公衆トイレは仕切りがなく、利用時に他の利用者と向かい合いになることから、「ニーハオ(こんにちは)トイレ」と揶(や)揄(ゆ)され続けた。国際的な悪評を払拭して、観光客増加にもつなげたい考えだ。しかし、トイレに執心する習氏への忖(そん)度(たく)が行き過ぎたのか、ソファ付きの豪華な「五つ星トイレ」も登場し、「やり過ぎだ」との批判を集める事態にもなった。