理学療法士の養成学校に通っていた男性が自殺したのは実習先の診療所でのパワーハラスメントが原因として、男性の妻が学校と診療所を運営する医療法人に約6100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。北川清裁判長は学校と診療所の安全配慮義務違反を認め、全額の支払いを命じた。遺族の代理人弁護士によると、学校だけでなく、実習先の責任を認めた判決は異例という。
判決によると、平成25年11月下旬、養成学校の「近畿リハビリテーション学院」(大阪府摂津市)に通っていた大野輝民(てるひと)さん=当時(39)=が、実習先の診療所「辻クリニック」(大阪市住吉区)から行方不明となり、神戸市内の公園で自殺しているのが見つかった。遺書には「本当にもう無理」などと書かれていた。
大野さんは同月5日から診療所で実習を開始。指導を担当した理学療法士から強い口調で「帰れ」などと繰り返し叱責を受けた。さらに厚生労働省の指導要領では、1週間の学習時間を45時間以内としていたが、大野さんは自宅で深夜まで実習の書類を作成し、平均約70時間に及んでいた。