その子の個性を大切にしながら柔軟な指導をすることと「もったいないこと」や「感謝の気持ち」などを指導することとは全く矛盾しない。
私が勤めていた東京都大田区内の小学校では、生活を指導する基本は「個性の伸長」であることを「教育課程の冊子」の中に次のように明記していた。
「躾(しつけ)はきちんと指導されなければならないが、それは『忘れ物をする』などのだらしなさが、個性の伸長等に妨げになるからである。従って躾は段階をふまえ、準備をしてする必要がある。過度に高い水準を実態をふまえず、一律に強いることは行わない。例えば、体罰、授業中・掃除時間にくいこむ食事の強制、学校に来るのがいやになるほどの指導は行わない。それにかわるよい方法を検討し実施する。人間は何にもまして大切であり、尊重されなければならないことを絶えず指導する」
この文章を書いたのは私である。全職員が確認し、この基本に沿って指導をしていた。40年近く前のことである。
各地の給食指導、生活指導を再度検討していただきたい。
◇
【プロフィル】向山洋一
むこうやま・よういち 30年以上の教員経験。「TOSS」(教育技術法則化運動)は全国の教員約1万人が参加。