黒船艦隊が最初に観測
黒潮特有の現象である大蛇行の初観測は1854年。日本に開国を迫ったペリーの黒船艦隊が測定した海況データに、その様子が捉えられていた。
幕末の日米交渉で活躍したジョン万次郎を乗せた漁船は1841年に、四国沖から吹き流されて伊豆諸島の鳥島に漂着しているが、大蛇行の黒潮によって運ばれた可能性が高そうだ。
今回の大蛇行は、1965年以降、6回目だが、宮澤さんらアプリケーションラボの研究陣は、開発した海流予測システム(JCOPE2M)を使って、その発生の事前予測に成功している。
チームは、昨年5月末から黒潮大蛇行が起きる可能性があることの発表を始め、9月末の発生を8月上旬に的中させたのだ。
日本の海洋学の実力が世界に示された。
天気予報に比べ、海流のリアルタイムの予測は格段に難しい。計算量の圧倒的多さと観測データの少なさが高い壁になっていたのだが、黒潮研究でその道が開かれた。
島国の日本にとって「海流予報」の価値は大きい。漁業への利用にとどまらず、海流を利用した最適航路の選択は、海運業の省エネに結びつく。
黒潮の流路予測は、2カ月先までの図が、JAMSTECによってネット上の「黒潮親潮ウォッチ」で定期的に公開されている。