第二次世界大戦で死闘を繰り広げた旧日本陸軍航空将校らの戦いぶりや思いなどをつづった書籍「留魂(りゅうこん)」を、松江護国神社(松江市)の禰宜(ねぎ)を務める工藤智恵さん(52)が執筆し、同神社が発行した。遺族や戦友らから託された貴重な資料を丹念にひもとき、関係者を取材。全2巻の発行を終えた工藤さんは「若き士官たちが受けた精神教育、声にならなかった声を後世に伝えたい」と願っている。
工藤さんが取り上げたのは「陸軍航空56期生」。陸軍将校の育成組織「陸軍士官学校」の分校に当たる陸軍航空士官学校の昭和18年卒業生を指し、初期に編成された特攻隊の隊長は大半が彼らだったという。
ある時、56期生の遺族から士官学校時代の日記を託され、その記述を読んで胸を熱くした。平成20年頃を境に各地の戦友会がどんどん解散に向かう中、陸軍航空56期生の戦友会「紫鵬会」が会報を発行するなど活動を続けていることを知り、同会に連絡を取った。その後、会報が終刊となったことなどもあり、関係者から56期生に関する膨大な資料が送られてきた。