20世紀の地政学者マッキンダーは、海洋国家が大陸国家に対峙(たいじ)する際には、その中間に存在する半島の帰趨(きすう)が死活的に重要だと説いたことがあった。彼はこのテーゼを、紀元前5世紀のペルシャ戦争の昔からローマ帝国の時代を経て、20世紀の世界大戦の時代に至るまでの歴史を通観して確認している。東アジアの近代史には言及しなかったが、海洋国家の日本と大陸国家のロシアや中国との中間にある半島といえば、朝鮮半島しか存在しない。
≪東アジアの地政構造が変わる≫
明治時代の日本の政治家たちはマッキンダーを読んでいなかったが、彼と全く同じ発想で日本の独立と繁栄のために朝鮮半島の重要性を理解していた。日清戦争と日露戦争を戦った動機や、後に日本が朝鮮半島を併合した意図もまさにそこにあったという事実を、私は拙著(『海洋アジアと日本の将来』)で指摘したことがある。
第二次世界大戦と朝鮮戦争の戦後においても、朝鮮半島の南半分が韓国という名で海洋国家の側に残り、日本と韓国がともにアメリカの同盟国であったことが、日本の繁栄の一つの重要な基礎になった事実も、このマッキンダーの法則で説明できると考えている。