フリーマーケットアプリ運営大手、メルカリ(東京)が手がける、自転車を共同で利用し合うサービス「メルチャリ」の実証実験が22日、福岡市で始まった。交通渋滞が激しい福岡都心部は、自転車移動がお似合いだ。違法駐輪解消にもつながる。使い勝手が良い移動手段としての期待は大きい。(中村雅和)
「福岡都心部での回遊性を高め、車の流入を抑える。放置自転車も減らす。こうして自転車を利用できる環境を向上させるのが今回の実験のゴールだ。福岡でシェアサイクル文化を伸ばしたい」
同日、市役所で高島宗一郎市長と並び、記者発表したメルカリの小泉文明社長の表情は自信に満ちていた。
同社は今年2月から、天神エリアと博多駅、ウオーターフロント地区からそれぞれ半径2キロ圏内で、シェアサイクルのサービスを始めていた。
利用料は1分間に4円で、「ポート」と呼ばれる専用の駐輪スペースに事前に用意された自転車(300台)を乗り降りする仕組みだ。解錠や料金の支払いはスマートフォンの専用のアプリを使う。
これまでは、コンビニエンスストアやホテルといった民有地(57カ所)に駐輪場所は限られていた。
それでも、晴れた日は1日に3、4回も利用するユーザーもいる。
小泉氏は「当初思ったよりも多い利用者だ。利用は今後必ず加速する」と自信を持った。
高島氏は「自転車は健康にも良く、交通渋滞を少なくするメリットもある」と、自転車の持つ可能性を形にする方法を探った。
そこで今回の実験では、利用可能なスポットを区役所や公園といった市有地にも拡大した。8月末までに利用できるエリア全体で、計130カ所を整備する方針だ。
実験は平成31年度末まで行われる。市やメルカリは自転車の位置を衛星利用測位システム(GPS)で常に確認しながら利用者の動きをビッグデータで解析する。それを両者で、交通渋滞緩和のための施策づくりなどに役立てる。
メルチャリは、福岡市が創業特区として進める創業支援策の成功例でもある。
実験に使う自転車の鍵をインターネットを経由し解錠するシステムは、市の創業支援施設「福岡グロースネクスト」(中央区)に入居するベンチャー企業「tsumug(ツムグ)」が開発した技術を活用した。
メルカリは日本を代表するスタートアップ企業だ。19日には東京証券取引所の新興市場マザーズに上場したばかりで、時価総額は7千億円をつけた。
そんな新興企業と、福岡で産声を上げたスタートアップ企業とがタッグを組み、今後、相乗効果で新たなビジネスチャンスを創出し、暮らしやすいまちづくりにもつなげる。それが、高島氏の狙いでもある。
シェアサイクルを通じて生まれたメルカリとの縁を最大限に活用する。小泉氏をグロースネクストで開く勉強会に講師役に招く。
小泉氏も「福岡市はフットワークが軽い。最新の技術をもとに、より豊かになるだろう。そんな福岡市と共存共栄していきたい」と張り切っている。