王位継承物語

スキャンダルからの再生 現代君主は「道徳性」不可欠 関東学院大教授・君塚直隆

 「新しい世代の人々がこの国の未来を形づくるうえで中心的役割を担うのは当然のことであります。新たな活力を持ったより若い世代には、昨今の状況を変革し、改革を担っていけるだけの決断力もあるからです」

 2014年6月2日、スペインを38年間にわたって国民とともに支えてきたフアン・カルロス1世国王は、テレビ演説で国民にこのように語りかけ、自らの退位を表明した。それまで国民から絶大な信頼を寄せられてきた国王に、いったいなにが起こったのか。

 1931年、フアン・カルロスの祖父にあたるアルフォンソ13世の時代に、スペインに革命が起こり王制は倒された。その後の内乱(36~39年)を経て、全体主義的なフランコ独裁体制(39~75年)が36年の長きにわたって続いた。69年にフランコ総統から後継者に指名されたフアン・カルロスではあったが、国民の期待は薄かった。「王政復古となっても民主主義の時代は到来はしまい」。71年に行われた世論調査では、若き王子に将来を期待する声はわずか24%にすぎなかったのである。

 75年11月のフランコの死去とともに、フアン・カルロスは国王に即位した。彼の主導で77年には41年ぶりの民主主義的な総選挙も実施され、新生スペインの議会政治も整った。その4年後、陸軍のテヘロ中佐がこうした民主化の動きに反対し、200人の手勢を率いて議会を占拠した。国王はすぐさまテレビで演説し、テヘロに兵を引くように命じた。ここにスペインの民主主義は確立された。国王の人気はいまや揺るぎないものとなっていた。