八咫烏(やたがらす)は日本サッカーの象徴である。神武東征の際、山深い熊野で3本足のカラスが現れて神武天皇を道案内したとされ、熊野三山に祭られている。わが国初のサッカー書を翻訳した中村覚之助は那智勝浦町の出身で、功績をたたえて日本サッカー協会が昭和6年からシンボルマークとして使用している。
▶ユニホームの八咫烏のワッペンが導いてくれたのか、ワールドカップ(W杯)ロシア大会の初戦で、日本が強豪コロンビアに勝利した。自宅でテレビ観戦したが、近所のマンションから、チャンスを逃すと「アーッ」と嘆声が、得点すると「ウォーッ!」と雄叫びが聞こえた。日本中がそうだったろう。
▶W杯ほど日本人のアイデンティティーを感じる機会はない。「武器を持たない戦争」と言われるように、国同士が威信をかけた戦いだからだ。日本の前評判は高くなかった。選手からは「失うものは何もない」という声が聞かれた。これからは番狂わせではない。