書評

苦悩から解放へのヒントに  『よく生き、よく死ぬための仏教入門』田中利典著

 こうした仏教の成り立ちや伝わり方を教えられた後、最終章で「日本の仏教」が語られる。その中でも特に印象的なのはやはり「りてんさん」が関わってきた山岳信仰の意義が説かれる部分だ。山岳信仰は極めて実践的なものであり、「山の行より里の行」を掲げ、山で行った修行と悟りを里で実践してゆく宗教である。その哲学が私は好きだ。

 人間だけが死者に対してお弔いの行為をすることや、自分を超えたものを拝むことによって人間が人間らしくなるということが強く伝えられる本書には、私たちがこの世界に生きて、苦悩する事柄からより良く解放されるヒントが詰まっている。

 まずは本書を手に取り、「りてんさん」のお話を聞くように読み進め、その後は実際に「りてんさん」に会いに行くことをオススメする。(扶桑社新書・850円+税)

 評・河瀬直美(映画監督)