書評

苦悩から解放へのヒントに  『よく生き、よく死ぬための仏教入門』田中利典著

 本書は、長く奈良県の吉野山にある金峯山寺で総長を務められた田中利典さんの著書である。「仏教入門」と書かれているので、読むのが大変かと思いきや、長年懇意にさせていただいている「りてんさん」の口調が耳元で聞こえてくるような軽快さ。その内容も、「なるほど、ふむふむ」と勉強になることがたくさんある。

 たとえば「未熟な人間がいちばん神や仏に近い姿をつくれるのが合掌である」とか、「お寺(仏教)は吊(つ)り革」とか、「目覚めた人をサンスクリット語でバカボン」と言って、「これでいいのだ~」は「あるがまま、ありのままを受け入れる」という悟りの境地に通じている-とも書かれている。幼い頃に見たテレビアニメの「天才バカボン」を思い起こし、深い意味があったんだねと顧みる。

 お釈迦(しゃか)様の教えがたくさんありすぎて難しく感じるのも「一人ひとりに即して説かれたため」数が多くなっているといわれると、だから2500年かけてさまざまな国にきちんと届き、根付いていったのだと理解できる。そして、それらの教えをひもとくとき、仏教とはまさに「誰しもが仏になれる」教えという、世界でも極めてまれな宗教の意味を思う。