15年前に夫=当時(58)=を絞殺したとして殺人の罪に問われた兵庫県神河町(かみかわちょう)の無職の女(64)は連日、裁判員裁判の法廷で夫からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたことを訴えた。殺害後も後悔の気持ちから遺骨を持ち歩き、供養のため寺に通ったなどと証言する一方、殺害前から27歳年下の外国人男性と関係を持ち、犯行後にはこの男性と旅行に出かけたことが赤裸々に暴かれた。DV被害者、夫の殺害を懺悔(ざんげ)する妻、それとも不倫に走った女…。裁判員らの目に映った女の「素顔」とは。
「下着姿での生活を強要された」
夫の遺体が同町の空き家の庭で発見されたのは平成27年12月。女は別の詐欺事件で服役中だったが、県警の取り調べを受け、15年5月31日に睡眠薬を飲んで自宅の寝室で眠っていた夫の首をロープで絞めて殺害したことを自供した。
「もうだめだと思った。この地獄のような生活から逃れるには今しかないと思った」
今年5月14日に始まった裁判員裁判で女は夫を殺害したときの心情をこう証言した。夫のDVは結婚前から始まり、殴る蹴るの暴行に加え、時には刃物を突きつけられ、自宅外に逃げ出せないように「下着姿での生活を強要された」という。
DVは15年3月ごろに不倫が発覚したことで激化した。夫から「別れたいなら現金1億円用意しろ」などといわれ、限界を迎えたという。女は涙ながらに「(犯行日は)自分を監視している夫が先に眠った。(殺すなら)今しかないと思った」と述べた。