ため込んでいたストレスが限界値を超えたとき、その矛先は愛する娘へと向かった。大阪市住吉区で4月、マンション5階の自宅ベランダから長女(2)を投げ落として殺害したとして、殺人容疑で無職で母親の女(31)が逮捕された。女は「育児に悩んでいた」と供述。不眠や食欲不振が続く時期もあり、精神的に思い詰めていた様子がうかがえる。産後うつや育児ノイローゼといった言葉が示すように、出産を境に精神のバランスを崩す女性は少なくない。「完璧な母親になりきれなかった」と語った女。悲劇は避けられなかったのか。
夫の静止を振り切り…
「救急車!」
「お医者さんはいませんか!」
大型連休中の閑静な住宅街に、悲鳴が響いた。4月30日午前9時20分ごろ、同市住吉区苅田のマンション。アスファルトの地面に横たわる小さな女の子。駆け寄った父親とみられる男性は混乱状態となっていた。
現場向かいの集合住宅に住む主婦(24)は一部始終を目撃した。
女の子の名前を連呼し、人工呼吸を施す男性。女児は口から血を流し、男性の口元も赤く染まっていた。母親とおぼしき女が少し後になって姿を見せた。女児のそばに放心した様子でしゃがみ込んだ。「2人は対照的だった」と主婦は振り返った。
近隣住民からの通報を受けて大阪府警住吉署員が現場へ駆け付けた。府警によると、女は夫(36)とともに救急車に乗り、救急隊の措置を受ける女児に付き添っていたという。女児は搬送先の病院で死亡が確認された。