北朝鮮にとってこれは大きなチャンスだ。大規模な査察が入るとはいえ、検証は北朝鮮の申告に基づいて行わざるを得ない。仮に30発を20発と申告して廃棄すれば、10発は手元に残る。核能力は1発分でもあれば十分。インドやパキスタンのような立場を手に入れたい金氏は、いかにトランプ氏を出し抜くかの算段を立てているはずだ。
もう一つの焦点は2万8千人の在韓米軍の扱いだが、トランプ氏が撤退させる可能性は十分ある。もともと在韓米軍は北朝鮮の南進に備えて張り付けた「トリップワイヤ」の意味合いが大きい。今や北朝鮮には現代戦に耐え得る戦闘機や戦車はなく、南進の心配はない。トランプ氏が非核化の約束と引き換えに、コストの大きい在韓米軍の撤退を選択することは想定しておくべきだ。
最も恩恵を受けるのは中国だ。韓国に配備された米軍の高高度防衛ミサイルシステム「THAAD」どころか、在韓米軍そのものが消える。朝鮮半島への影響力は中長期的に揺るぎないものになるだろう。さらに南北の平和協定が成立すれば、その先には親中色の強い連邦国家の誕生さえ現実味を帯びる。米国との「太平洋分割」を目指す中国にとって、米朝首脳会談は重要なステップになる。