インドで、コウモリが宿主とみられる「ニパウイルス」が拡大し、感染症による死者が相次いで確認された。発症した場合、最高75%が死亡するとされる致死性の高いウイルスだ。まだワクチンが開発されておらず、対策は国際的な課題となっている。衛生環境が悪く「感染症の宝庫」とも指摘されるインド。地元メディアには日本企業の薬品に期待する記事が登場している。
(ニューデリー 森浩)
意識障害や脳機能不全…高い致死率
ニパウイルスによる感染症が報告されているのは、インド南部ケララ州だ。
州政府の発表によると、アラビア海に面する同州コジコデやマラプランで5月19日、ニパウイルス感染症で3人が死亡した。周辺住民や治療にあたっていた看護師にも感染が広がり、6月6日時点で17人の死亡が確認されている。
ニパウイルスは1998年にマレーシアで初めて確認された。感染すると、当初は目立った症状はないというが、発熱、頭痛、めまいなどの症状が現れ、意識障害や脳機能不全などが起こる。
国際保健機関(WHO)によると、発生した地域や時期によって差異はあるものの、死亡率は40~75%と推定されている。2004年には、バングラデシュで流行が確認され、14人が死亡している。