男は無言のまま隣席の女性に刃物を振り下ろした-。東海道新幹線の車内で9日夜、刃物を持った男に襲われた乗客の男女3人が死傷した事件。現場となった車両は逃げ惑う人々でパニックとなり、床は被害者らの血で染まった。同じ車両にいた乗客の証言から、男が起こした「凶行」の一部始終が明らかになった。
容疑者が2席前の2列シートの通路側に座っていた
事件は、東京発新大阪行き「のぞみ」265号の12号車で発生。12号車前方にいた大阪府吹田市の60代女性によると、異変は午後9時45分ごろ、新横浜駅を出発直後に起きた。「車両の後方から突然、『きゃー』と悲鳴が聞こえて、振り向かずに隣の車両に逃げ込んだ」と振り返る。
別の乗客から、若い男が新聞紙に包んだのこぎりのような刃物を取り、振り回していたと聞いたという。「12号車は女性が多く、みんな青ざめていた。子供も泣いており、とてもショックだ」と恐怖を語った。
同じ12号車最後列にいた兵庫県明石市の女性(31)は、男が犯行に及ぶ場面を目撃。2席前の2列シート通路側に座っていた若い男が突然立ち上がり、刃物のようなものを隣席の女性に無言で振り下ろすのを見たという。
その直後、女性の隣に座っていた男性と男がもみ合いになり、男が優位に立っているのを見て別の車両に逃げたという。「突然のことで、何の前触れもなかった。とにかくみんなパニックだった」と語った。