「韓国のサムスン電子とLGディスプレーが実用化する『蒸着方式』は、真空装置の中で発光材料を気化させて付着させてパネルをつくる。大きな装置が必要で、装置内に材料が付着してしまうので材料ロスも大きい。一方、印刷方式は発光材料をインクジェットプリンターのように基板上に塗り分ける。大気中で生産できるし、材料のロスも非常に少なく、コストを抑えることができる。だが、材料を微細に塗り分ける必要があるので、生産技術の難易度は高い」
--中型パネルの領域に最初に切り込む理由は
「スマーフォンなど小型はサムスン、テレビなど大型ではLGと先駆者がおり、JOLEDとしてはまず、中型の領域から入って広げていこうという方向になった。中型で顧客のニーズに応じるには、精細度の技術レベルを設立当初の水準より大幅に引き上げる必要があった。だが、1年後には目標とする精細度を実証することができ、試作ラインを設置しても良いという経営判断になった」
--前身2社の技術の融合は円滑に進んだか
「印刷方式を開発してきたのはパナソニックで設備や材料にノウハウがあった。一方、ソニーは蒸着方式で世界で初めて19年に有機ELテレビを発売するなど量産実績に強みがある。統合するまではライバルでお互いの技術はクローズだったので、どう突き合わせてオープンに動くかには苦心した。東入来信博社長が最初に『まず、わが社といえ』『わが社をどうするかを第一優先で考えろ』とトップダウンで繰り返したことで、早い段階で技術の融和が図れたことが大きい」