現在、中国やロシアなどに向けた輸出を増やせないか対策を練っているという。
貨幣価値下落で混乱
小売りでも動揺は大きい。「消費が冷え込んでどうしようもない。トランプはわれわれを殺そうとしている」と語気を強めたのは、テヘランで高級カーペット店が軒を連ねるシャーアッパシー市場で店を営むムハンマド・プルセティギさん(45)だ。
冷え込む一つの要因が、通貨リアルの下落だ。リアル相場は公式レートと実勢レートで差があるが、昨年暮れに1ドル=4万リアル程度だった実勢レートは、今年に入って下落を始め、1ドル=6万リアルに落ち込んだ。現地メディアなどでは下落の原因を米国の制裁再開の動きと関連づける見方が強い。そこに政府が4月に2つのレートの統合を決めたことも混乱に拍車を掛けた。
3億リアル(約78万円)以上の高級品をそろえるプルセティギさんの店では今回の事態は死活問題だという。
「リアルの信用度が減り、みんな現金を金や仮想通貨に交換して資産を守ろうとしている。じゅうたんどころではない」とプルセティギさんは頭を抱えた。
市民の間では、穏健派ロウハニ政権は海外投資を呼び込むことで、「経済を活性化させてくれる」という期待が強かっただけに失望が広がっているもようだ。
「現状を招いたのは米国の暴走なのか、国の経済政策の失敗なのか。よく分からない」
イラン東部で輸入紅茶の販売業を営む男性(71)はあきらめた様子で話し、こう続けた。
「だけど、確かに言えることは1つだ。国民の生活は苦しいということだ」