近所のマンションの谷間からカエルの合唱が聞こえる。猫の額ほどの田んぼに水が張られて、田植えが終わった。「みどり児と蛙鳴く田を夕眺め」(中村汀女)。田んぼのカエルは梅雨入りが近いと教えてくれるが、百田尚樹さんの「カエルの楽園」(新潮文庫)は寓話的な警世の書である。
▶故郷を追われた2匹のアマガエルがたどり着いた国は、他のカエルを信じろ、争うな、争うための力を持つな-という「三戒」によって平和が保たれていた。そこに敵の脅威が迫り、国を守るために「三戒」を破棄して戦うかどうかの国民投票が行われるが…。憲法9条をめぐる議論を連想させる。
▶米朝首脳会談が1週間後に迫った。はたして北朝鮮は核・ミサイルを放棄するのか。結果によっては、日本の安全保障は重大な局面を迎える。国際情勢は緊迫しているのに、国会はいまだ「蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)」である。カエルやセミが鳴くように、モリ・カケ問題でいたずらに騒がしい。