日本にとっては安全保障上も拉致問題の解決上も現在よりずっと厳しい状況となる。在韓米軍の縮小のみならず、国連軍の名の下で協力しているオーストラリア軍、カナダ軍、英国軍の朝鮮半島、ひいては日本への関与も難しくなる。自衛隊が行っている東シナ海での監視活動にこれら3カ国の軍が参加しているが、それが可能なのは朝鮮国連軍と日本が地位協定を結んでいるからであり、休戦協定がなくなれば難しくなる。
狡猾(こうかつ)で強気なこの種の交渉を北朝鮮が推進できるのは、中国が背後で支えているからだ。北朝鮮が中国のコントロールの範囲内にいる限り、現状がズルズルと続くことは、中国にとって不都合なことではない。現にトランプ氏が、中国との貿易交渉では北朝鮮問題を気にしていると告白したように、中国は北朝鮮問題を対米交渉に利用可能だ。
だからこそ、トランプ氏は国防総省や通商代表部の報告書を貫く原則論に倣って、米国の掲げる価値観、原理原則の旗を降ろしてはならないのではないか。それは北朝鮮に対してはジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の路線を基本にし、中国にその大前提を明確に伝えるということだ。
私たちは岐路に立っている。完全非核化を比較的短期間で達成し、拉致が解決されれば、日本は喜んで協力する。それまでは一切協力できないという原則をいかに守れるか。英知を結集して事に当たるべきときだ。にもかかわらず、立憲民主党など野党は小野寺五典防衛相や麻生太郎財務相の国際会議への出席に反対した。「モリカケ日報問題」だけを見ていて、この厳しい国際情勢に対応できると考えているのか。
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