櫻井よしこ 美しき勁き国へ

懸念つきまとうトランプ米政権の北朝鮮外交 北と、北を背後で支える中国に原則貫け

 パラオへの1億2400万ドル(約136億円)の援助は同法で定められた。中国が想定する第2列島線上の重要戦略拠点がパラオで、中国は長年狙いを定めてきた。西アフリカのサントメ・プリンシペやパナマ、ドミニカ共和国などが次々に台湾と断交する中で、パラオが台湾との国交を守り続けているのは日米両国の援助が背景にある。

 台湾防衛の姿勢を強めるトランプ政権は3月、台湾旅行法を成立させて米台高官の相互訪問を可能にしたが、同法は米議会の対中警戒感の強さを反映して、なんと上院が全会一致で可決した。南シナ海では米海軍の航行の自由作戦も行われている。自由や民主主義という普遍的価値観や原則にのっとった戦略を取る限り、米国は揺るぎなさを示す。

 強い懸念がつきまとうのが北朝鮮外交だ。金正恩朝鮮労働党委員長が「朝鮮半島の非核化」と朝鮮戦争の「休戦協定の平和協定への変更」を並行協議しようとしているのは明らかだ。そのうえで北朝鮮は、前者がいかに複雑で時間がかかるかを強調したのであろう。マイク・ポンペオ米国務長官もドナルド・トランプ大統領も、6月3日時点で非核化のプロセスは長期化するとの見方を示している。つまり非核化実現の前に休戦協定が平和協定に変更される可能性があるということだ。

 国際協定の変更は不可逆で、北朝鮮の非核化の約束はいつでも可逆である。平和が達成されたという建前では、事実上の国連軍である在韓米軍は大幅な縮小もしくは撤退へと進まざるを得ない。そのとき、完全非核化が未達成ならば、トランプ外交は過去の事例と同じく、失敗に終わる可能性大である。

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