戦前期の米大統領フーバーといえば、米史上最高水準の輸入関税法に署名するなど大恐慌を引き起こした張本人といわれている。
現実にはルーズベルトのニューディールに先駆けた財政拡大で恐慌の火消しに当たり、外交では共産主義と対ソ連警戒から極東唯一の安定勢力と日本を位置づけた。
退任後はルーズベルトの対日経済封鎖が日本を対米戦争に追い込むと開戦回避を模索し、戦中もソ連参戦前の対日和平を進言した。
本書は膨大な資料を駆使して既存のフーバー評を覆し、トランプ外交が世界を揺さぶる中、本物の米保守主義を問いかける。(名古屋大学出版会・5800円+税)