米朝首脳会談

焦る正恩氏 テロの司令塔だった最側近を米国に急派…完全アウェーの中、妥協点を見いだせるのか

 英哲氏はかつて正恩氏の戦術面での指南役を務めたといわれる。正恩氏は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との2回目の会談で英哲氏だけを同席させており、信任の厚さを物語る。英哲氏の派遣にトランプ氏も会談中止を伝えた自らの書簡に対する「誠実な返答」だと評価した。

 一方、2010年の韓国哨戒艦撃沈を主導したとされ、今年2月の訪韓では韓国保守層の強い反発を招いた。14年に正恩氏の暗殺を扱った米映画会社へのサイバー攻撃を仕組んだとされるほか、米政府が10年、兵器取引などを理由に独自制裁の対象に指定している。

 今回は特例で入国が許可されたとみられ、この局面でなければ、温かく迎え入れられる人物ではなかった。強硬派として知られる半面、韓国芸術団の4月の平壌公演で、韓国記者団が会場から閉め出される不手際が生じた際、即座に謝罪する柔軟な対応も見せた。

 韓国紙の中央日報によると、北朝鮮は板門店での実務協議で、非核化の条件として米国との外交関係の樹立や制裁解除など敵視政策の撤回を要求したという。

 ニューヨークが会談場所に選ばれたのは、国連の北朝鮮代表部があり、米国内で唯一、盗聴を気にせず本国と連絡できるからとも指摘される。ただ、協議中に逐一、正恩氏の判断を仰げるわけでなく、会談再設定の決定権を米側に握られた不利な条件で、北朝鮮流の杓子(しゃくし)定規な主張から抜け出せるのかが試されている。

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