□ちばぎん総研主任研究員・高城華楠
地域の特産品などの商標権を保護する制度に「地域団体商標」制度がある。この制度は、地域ブランド保護のため「地域名+商品(サービス)名」を商標登録しやすくする国の仕組みだ。登録されれば商標としての法的保護が受けられるほか、その特産品の信用力や訴求力を高められる効果も期待できる。千葉県では、平成19年3月に「房州びわ」が登録されたのを皮切りに、今年4月末時点で15件の地域団体商標が登録されており、件数では全国12位、1都3県では東京都(18件)に次いで2位となっている。
千葉県の地域団体商標を種類別にみると、全15件中、食品が13件、サービス提供(温泉)が2件と、食品が大多数を占めており、東京都(食品3件、工芸品等14件、サービス提供1件)、神奈川県(食品5件、工芸品等1件、サービス提供2件)、埼玉県(食品2件、工芸品等4件)と比べると、本県では豊かな自然の恵みを生かした地域ブランドが特に多いことが分かる。
地域団体商標登録のメリットとしては、(1)地域ブランドにタダ乗りしようとする質の悪い類似(便乗)商品を排除できること(2)ブランド化によって差別化を図り、その付加価値の向上を通じて地域おこしや経済活性化を行いやすくなること-などが挙げられる。(1)はブランド力を保護する「守り」の役割、(2)はブランド力を経済活性化に活用する「攻め」の役割ということができる。
全国的に、この制度が(1)の効果を発揮している一方、(2)の取り組み姿勢は総じて弱く、千葉県もその例外ではない。
こうした中で、国は新商品開発や情報発信などを支援して攻めの地域活動を促しており、今治タオル業界が、地域団体商標を取得しつつ著名デザイナーによる製品ロゴマークの作成、タオルの歴史・文化・技術などに精通したタオルソムリエの育成、英国・イタリアなど海外展示会への出展とアジアを中心とした現地での商標登録出願などを通じて、国内外でのブランド価値向上と権利保護を進めるといった事例が見られている。千葉県でも地域団体商標の梨をジャムの原料にしたり、ビワグッズを開発する6次産業化の動きが見られるが、海外展開が可能な差別化や全国ブランド化は道半ばである。
2020年東京五輪・パラリンピックではたくさんの選手・観光客が千葉県を訪れるため、県内の特産品をアピールする絶好の機会となる。その時を目指して、県内でも地域ブランドに関わる関係者がその価値をさらに磨き上げつつ、一段の差別化やブランド化を図る動きが活発化することを期待したい。 (寄稿、随時掲載)