北方四島をロシアから取り戻す道筋は依然、見えない。21回目となった安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談の厳しい現実である。
首相は会談後の記者発表で、共同経済活動による「新しいアプローチ」の下で「平和条約に向け、着実に前進していく決意を2人で新たにした」と語った。
四島返還に応じないロシアの姿勢は極めて問題だ。同時に、前進を伴わない決意もむなしく響く。返還への道筋の見えない交渉姿勢に国民の理解は得られぬ。
首相の基本姿勢は、四島での共同経済活動を通じて信頼醸成を図り、領土返還を伴う平和条約締結に持ち込もうというものだ。
平成28年12月の首脳会談で「新しいアプローチ」の一環として打ち出したが、1年半を経て事業は一つも始まっていない。
海産物の養殖や農産物の温室栽培などが候補に挙がるが、どうしてそれが領土返還に結び付くのか実感がわかない。今夏に民間調査団を派遣するというが、経済活動の前提となる「特別な制度」について合意はできていない。
共同経済活動にあたっては「双方の法的立場を害さない」制度を目指すとしてきた。だが、ロシアの法的立場と併存する活動自体、日本の主権を危うくする。
プーチン氏は記者発表の大半を経済関係に費やした。日本から経済的利益を搾り取ることしか、頭に描いていないのではないか。