iRONNA発

リハビリ難民 西城秀樹さん死去に思う脳梗塞の現実 上昌広氏

ヒット曲「YOUNG MAN」を熱唱する西城秀樹さん=平成26年4月、千葉・幕張メッセ(戸加里真司撮影)
ヒット曲「YOUNG MAN」を熱唱する西城秀樹さん=平成26年4月、千葉・幕張メッセ(戸加里真司撮影)

 歌手の西城秀樹さんが63歳という若さでこの世を去った。2度の脳梗塞を発症し、懸命なリハビリを続ける中での突然の訃報だった。西城さんの死を機に、わが国が直面する「リハビリ難民」の現実を考えてみたい。(iRONNA)

 実は、西城さんとはご縁があった。それは私が社外取締役を務める株式会社ワイズとNPO法人脳梗塞リハビリ研究会が共同で運営する「脳梗塞リハビリセンター」に、西城さんが通院していたからだ。

 ワイズ社の早見泰弘会長は「巡業などの仕事で休む以外には、いつもリハビリに取り組まれていました」と振り返る。西城さんは最期まで復帰を目指し、懸命な努力をしていたのである。

 ところで、「脳梗塞リハビリセンター」という施設をご存じだろうか。都内で10施設を経営しているが、医療機関ではない。完全自費であり、理学療法士が個別対応する。

偏在する理学療法士

 高齢化社会ではリハビリの需要が増加する。脳卒中はもちろん、整形外科疾患から心臓病、がんの手術後まで、多くの疾病からの回復に必要不可欠だ。ところが、厚生労働省は平成18年にリハビリ日数を最大180日に制限した。

 20年10月からは入院後6カ月以内に退院する患者が6割を下回る病院への診療報酬が大幅に引き下げられた。この結果、重症患者の受け入れを断る病院が増えた。今春の診療報酬改定では、急性期を乗り越えた後の回復期リハビリ病棟は3段階から6段階に細分化され、実績によって加算が変動することとなった。重症患者を受け入れる病院はますます不利になる。

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