滋賀県草津市野路(のじ)町の榊差(さかきざし)遺跡で、獣の脚を模して鉄製の鍋や釜に付けた鍋脚「獣脚(じゅうきゃく)」の鋳型(いがた)片が見つかり、市教育委員会が23日発表した。8世紀初頭(奈良時代)のものとみられ、獣脚の鋳型としては国内最古という。鍋や釜を鋳造した同時代の工房跡の遺構も見つかり、市教委は「付近には鋳造関連遺跡が集中しており、律令国家の建設に大きな役割を担っていたと考えられる」としている。
出土した鋳型片は、獣の爪先にあたる部分など約50点。直径30センチ以上の鍋などに使われた可能性があるという。獣脚が付く鍋や釜は、寺院や有力者などが使ったと推測される。獣脚の鋳型の出土例は少なく、貴重な事例だという。
工房跡は、いずれも7世紀末とされる奈良県明日香村の川原寺(かわらでら)の鋳造遺構と飛鳥池(あすかいけ)工房遺跡に次ぐ古さ。生産した鉄は平城京などに供給されたとみられる。
榊差遺跡は近畿と東国を結ぶ古代の幹線道「東山道(とうざんどう)」沿いに立地しており、市教委は「原料調達や情報を得やすい交通の要衝に築いたと考えられる」としている。