旧古河庭園100年 カミソリ外相、西郷どん一族… 激動の時代駆け抜けた邸宅と主たち 

■中国人政治家

 震災から3年後、虎之助夫妻は新宿区内に転居し、同邸宅は9年間で主を失うことになった。この間の経緯について、同書は夫妻が西郷家から養子に迎えていた市太郎が6歳で急死したことや、第一次大戦後の景気下降、労働争議などがもたらした虎之助の心境の変化を指摘している。

 時代が昭和に移り、虎之助夫妻の退去で財閥の迎賓館となった邸宅に思わぬ賓客が訪れる。中国国民党の実力者で、後に南京政府を樹立する汪兆銘だ。昭和13、14年頃、日本に亡命した汪をかくまうことになった邸の周囲では、憲兵が厳重に警備し、汪の食事は帝国ホテルから取り寄せていたという。

 15年に虎之助が死去すると、4代目当主には早世した市太郎の兄にあたる従純が西郷家から迎えられた。戦況が厳しさを増す中、従純は財閥当主でありながら召集に応じ、邸宅も第九師団の将校宿舎として利用された。戦後も進駐軍に接収された。震災や空襲からは奇跡的に難を逃れた同邸宅も大正末期以降の時代の荒波には翻弄された。再び平穏な時間を取り戻したのは戦後になってからだった。

(森山昌秀)

 ■旧古河庭園 東京都北区西ケ原1の27の39。開園は午前9時~午後5時(入園4時半まで)。(電)03・3910・0394。JR上中里駅、東京メトロ西ケ原駅とも徒歩7分。一般150円、65歳以上70円。5月20日までバラと洋館・日本庭園のライトアップ、31日まで100年記念事業「春のバラフェスティバル」開催中。

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