元JETRO北京センター知財室長の日高賢治氏は「合弁会社をつくらないと運営できない海外企業の弱みにつけこんで、技術を無理やり開示させようとする例が後を絶たない」と指摘する。知財問題に詳しい専門家によると、進出企業が中国で合弁会社の相手企業に技術を教えたことで、1年もたたないうちに同様の技術を持つ全く別の企業が出現した知財流出事案も発生しているという。
「長い期間、資金と時間をつぎこんだ技術を一瞬で奪い取る。まるで、海賊のようなやり口だ」。中国の進出経験のある別の企業幹部もため息をつく。
巧妙化する手口
標的となっている企業は日本だけではない。米政府も、中国への進出と引き換えに技術ノウハウの提供を米企業に強制しているとされる状況を調査してきた。トランプ政権が、中国による知的財産権侵害として問題視している「深刻な課題の一つ」(JETRO関係者)という。
一方、知的財産権の侵害をめぐっては、模倣品の問題も深刻化している。
財務省によると、日本での模倣品の税関差し止め件数(2017年)全3万627件のうち9割以上の2万8250件が中国の製品だった。数だけではなく、中国の業者などによる模倣品の製造や販売の手口は巧妙化している。
特許庁によると、近年、正規品の容器や包装を回収して粗悪な製品を詰めて偽って販売したり、正規品であることを示す識別シールを模倣して貼り付けたりする悪質な被害が発生しているという。特許庁の北村弘樹国際政策課長は「最近はインターネットの販売など流通が多様化しており、各企業が模倣品を追いづらい状況にある」と危機感をあらわにする。