正論

リベラル国際秩序を守る気概を 防衛大学校教授・神谷万丈

 しかも今日、リベラル国際秩序は内部からの動揺にも直面している。この秩序が米国の利益になっていないと信ずる人物が米国の大統領になったからだ。トランプ大統領はリベラルな価値や理念を好まない。国際協調主義を嫌い、多国間国際制度を疑う。戦後秩序の要である自由貿易にも敵対的で、貿易をゼロサム的なものとみる。

 ≪中露に対抗していけるのか

 要するに彼は、国際協調によって世界がよりよい場所に変わるとは思っていない。貿易にも外交にも勝ち負けがあり、協調ではなく2国間の取引こそが米国に利益をもたらすとみている。リベラル国際秩序への挑戦がかつてなく強まっているときに、米国の指導者が秩序維持のリーダーシップを放棄しかねない態度をとる。こうしたことで、われわれは、中露の挑戦に応えていけるのだろうか。

 私はこの3年、日本国際フォーラムと米国防大学が行った日米同盟の将来に関する日米合同研究の主査を務めたが、最終報告書の題名を「かつてない強さ、かつてない難題」とつけたところ、すこぶる評判がよい。それは、今日米同盟が置かれている状況をまさに言い表しているからだと思う。

 先の日米首脳会談で、安倍晋三・トランプ両首脳は、ゴルフを含めると10時間以上をともに過ごし、北朝鮮が非核化に向け具体的な行動をとるまで最大限の圧力を維持することを確認するなど、同盟の結束の強さを世界に示した。

 だが、トランプ政権下の日米同盟には楽観できない「難題」もある。特に米国の大統領が、リベラル国際秩序を弱めるような行動を自らとり始めていることには、危惧を抱かざるを得ない。今やわれわれは、日米同盟が強固でも、日本外交が安泰とはかぎらないという時代にいるのである。他の先進民主主義諸国と協力しつつ率先して中露と向き合い、リベラル国際秩序を守っていく気概が必要だ。

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