【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は6日の論評で、安倍晋三政権が北朝鮮への制裁と圧力の維持を唱えながら、米韓を通じて日朝対話を模索していると批判し、「下心を捨てない限り、1億年たってもわれわれの神聖な地を踏めないだろう」と主張した。
金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は南北首脳会談で「いつでも日本と対話を行う用意がある」と述べたとされる。北朝鮮との対話の流れに乗り遅れると強調することで、最大限の圧力維持を米韓に働きかける安倍政権を牽制する狙いがあるとみられる。
論評は「日本が蚊帳の外に置かれることはない」との安倍首相の発言を伝えた産経新聞などの報道を持ち出し、「日本の孤独な境遇は実に哀れだ」と主張。日本メディアが拉致問題などについて「わめき立てている」と非難し、「運命の分かれ道でいまいましく振る舞うなら、のけ者の境遇を免れない」とも警告した。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は6日、北朝鮮の核放棄まで制裁・圧迫を緩めず、人権問題を強調する米国の姿勢を批判し、「やっとのことで整えられた対話の雰囲気に冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻そうとする危険な試みだ」と牽制した。
トランプ米大統領は、安倍氏の要請を受けて米朝首脳会談で日本人拉致問題を提起すると約束した。北朝鮮は米朝会談で拉致問題を含む人権問題を追及され、交渉のハードルが上がることに予防線を張った形だ。