トランプ米政権と中国の習近平政権との間で、通商対立の激化が懸念されている。4月上旬には知的財産の侵害をめぐり中国への制裁措置として追加関税を課す対象品リストの原案を公表した米国に対し、中国は即座に報復関税で応じ世界貿易機関(WTO)にも提訴するという報復合戦の様相を呈した。こうした状況下で、中国側に1980年代の日米貿易摩擦を「教科書」とする動きがある。日本の元首相も中国官製メディアのインタビューで、日米貿易摩擦との「相似点」に言及。中国側は日本の過去の経験を研究することで、決定的な「米中貿易戦争」という事態を回避する考えのようだ。
(外信部 三塚聖平)
「日本は多くの成功事例もあるので参考に」
「中国当局者は日本の経験をよく勉強している」
中国で勤務する日本人エコノミストは、80年代に本格化した日米貿易摩擦での日本の対応ついて尋ねられる機会が少なくないと話す。日米貿易摩擦では、米側が日本に輸出制限や市場開放を強硬に迫っており、現在の中国の姿と重なる部分が多い。
日本人エコノミストは「日本のように米国ペースで市場開放を迫られるような事態を避けるため、すぐに折れることなく長期戦も視野に対処する戦略ではないか」と指摘する。
「中国は日米貿易摩擦について学んでいる。日本には多くの成功した事例もあるので、参考にしているところだ」
中国国際経済交流センター首席研究員の張燕生氏は、4月19日に日本記者クラブ(東京・内幸町)で行った会見で日米貿易摩擦の経験・教訓を重視していると述べた。
張氏は「現在の中米の貿易摩擦と、日米貿易摩擦とはバックグラウンドが非常に似ているところがある」と指摘する。張氏の説明によると、日米貿易摩擦が最も激しくなった80年代には当時のレーガン大統領が大型減税を実施。その結果として米国の財政赤字が増え、ドル高なども進み日米の貿易不均衡が高まった。現在、トランプ政権も大型減税やインフラ投資の拡大を進めると述べており、張氏は「中米の貿易不均衡が拡大していく。中国がどのような方法をとったとしても、やはり拡大するだろう」と先行きを警戒する。
「中国は当時の日本よりも強い立場を守り抜く」
中国紙、参考消息(電子版)も4月上旬、香港メディアの記事を引用する形で日米貿易摩擦の経験を紹介する記事を掲載した。その中で米国政府のスーパー301条(米通商法301条)などに言及し、「当時、日本を攻撃した手段によって、中国の勃興を押さえ込もうとしている」との見方を示した。